4/27 「松島」

 松島に来た。

 日本三景の一つ。言わずと知れた観光地──松島である。

 松島と聞くと、真っ先に「松島やああ松島や松島や」の句を思い浮かべる人が大半ではないだろうか。僕もその一人だ。

 これを詠んだのは松尾芭蕉ではなくて、田原坊だという説が濃厚らしい。まあそんなのはどうでもいい。

 芭蕉であれ、田原坊であれ、いずれせよ僕はこの句が好きではない。というか嫌いだ。

 なぜなら、これこそまさに「何を言ったかではなく誰が言ったか」という言葉を体現するものだと思うからだ。

 何を言ったかより、誰が言ったかの方が圧倒的に重要視される。

 そりゃそうだろう。

 東大生の語る勉強法、五流大学生の語る勉強法──たとえ後者の内容の方が優れていたとしても、それを評価する者はいない。

 「松島やああ松島や松島や」というこの句も、一流の俳人が詠んだからこそ後世に語り継がれているわけで、もしもこれを詠んだのが名のない俳人だったなら、一笑に付されてそれで終りだったはずなのだ。

 言葉は平等だと信じたいが、そんなことは決してない。言った人間の価値が、その言葉の価値となる。

 名を馳せた偉人、芸能人、メダリスト。彼らが口にした言葉は、彼らが言ったというだけで価値を持つ。

 一流の言葉として扱われる。

 だから僕が何を言っても、僕の言葉に価値はないし。他人の心に響くことはない。

 どこまでも、どこまでいっても戯言だ。

 だとしたら──そんなのはあんまりじゃないか。

 

画像、松島より
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